徒然なるままに

私の不器用な人生を見届けてください

Abnormal Zeeman Effect PART1

こんにちは。
自粛規制の中、週1回日入ってくる農業が楽しくてしょうがないです。
メンボーです。


前回の記事で正常ゼーマン効果が終わりましたので、引き続き異常ゼーマン効果について話していきたいと思います。

まぁ、プライベートな話にはなりますが、自分の研究室が磁性をテーマにしているためスピンの発見のきっかけとなったこの異常ゼーマン効果という現象は語らずにはいられなかったという背景もあるのです。。自分はどんどん先の理論をやっていきたいタイプの人間なので、量子力学をもう一度復習するという行為自体少し酷でしたし、復習することで見える自分の理解度の低さに呆然としていました。。 なので、今日は文調に元気がないかもしれません。まぁ、しょうがないです。 人生は単振動。


やっていきます。 とりあえず、異常ゼーマン効果を一言でまとめ、オキモチだけチョットワカル感を持っておきましょう。

「縮退していたスピン角運動量のエネルギーが外部磁場によって解かれること」

かなぁ。(信用ならんな。)正常ゼーマン効果との大きな違いは"スピン"の効果が取り入れられているという点です。

余談ですが。。。。 スピンが量子力学に導入される以前、このゼーマン効果の問題、詳しく言えば、スペクトル多重項内準位の間隔を求めるという問題は、原子核角運動量と電子軌道角運動量によって生じる磁気的相互作用により説明されると考えられていたようです。この考えのもと、スペクトル多重項内準位の間隔を米国の物理学者アルフレット・ランデ氏(あのランデのg因子のランデ氏です) が理論的に求めたのですが、残念ながら実験値と合いませんでした。ここで、電子自体が回っているのではないかというアイデアが導入されることになったようです。*1

さて、話をもとに戻してっと。オキモチだけ理解したところで、早速具体的な話に入っていくのですが予め大まかな道しるべをここで↓宣言しておきますね。

「異常ゼーマン効果理解した。」までの道のり

1.スピンのことも考えて磁場が印加されている原子のハミルトニアンHを書き下す。
2.このHを電子の固有関数に作用させて、エネルギー準位が分裂しているか確かめる。
です。

正常ゼーマン効果の時とは違い、ラグランジアンを作ってそこからルジャンドル変換して...なんてこともうしないので今日のこの記事で終わります。 以前の記事→Normal Zeeman Effect PART2 - 徒然なるままにでスピンを考慮しない状況下のハミルトニアン(ここでは一般的な荷電粒子として電荷qを持たせていますが、ここからは電子として電荷は-eとしましょう)は

\begin{eqnarray} \displaystyle H = \frac{\boldsymbol{P}^ 2}{2m} - e \phi + \biggl(-\frac{e}{2m} (\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{P}) + \frac{q^ 2}{8m} \Bigl(\boldsymbol{B} r^ 2 - (\boldsymbol{B} \cdot \boldsymbol{r}) \boldsymbol{r} \Bigl) \biggl) \cdot \boldsymbol{B} \tag{1} \end{eqnarray}

で、最後の反磁性効果を示す項は無視できるほど小さいとすることができたのでした。よって結局、

\begin{eqnarray} \displaystyle H = \frac{\boldsymbol{P}^ 2}{2m} - e \phi + \mu_B \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{B} \end{eqnarray}

となるわけです。ここにスピンの効果が加わるとどんなタームが現れるでしょうか。これらですよね↓
1スピンと磁場との磁気的相互作用項
2.スピンと原子の軌道角運動量との相互作用項
二つ目の物はLS結合と呼ばれます。ここでハミルトニアン整理のため、未摂動項をH_0、摂動項としてのLS結合の項を H_{LS}、これまた摂動項としての磁場との相互作用項を H_Bとします。すると

\begin{eqnarray} \displaystyle H &= H_0 + H_{LS} + H_B \tag{2}\\ H_{LS} &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) \tag{3}\\ H_B &= \mu_B ( \boldsymbol{l} + 2 \boldsymbol{s}) \cdot \boldsymbol{B} = \mu_B B (l_z + 2 s_z) \tag{4}\\ \end{eqnarray}

こんなハミルトニアンになるわけですよね。*2
(ここで、磁場はz軸方向に印加していることに注意)そして今Bをどんどん大きくして、摂動項の中で[tex : H_B >> H_{LS}]が成立するような状況だとします。この時系の状態を表すのによい固有ケットは | n, l, m_l, m_s>ですよね。*3(ただし、磁気量子数を軌道角運動量の磁気量子数 m_lとスピンの磁気量子数の m_sとした。)なぜなら演算子 l_z, s_zを作用させれば行列対角上に固有値を返してくれるのですから。物理的に考えれば、磁場がz軸方向にかかったことでその系の状態をよりよく表してくれる基底が変化したともいえますでしょうか。この固有ケットで H_Bを挟めば磁場によるエネルギー準位の変化が

\begin{eqnarray} \displaystyle < n, l, m_l, m_s | H_B | n, l, m_l, m_s > = \mu_B B (m_l + 2m_s) \end{eqnarray}

となります。前回記事で求めた正常ゼーマン効果のエネルギー準位シフトの式は \mu_B B m_lでした。 それでは各量子数に具体的に数値を代入して準位分裂の様子をみていきましょう。主量子数n, 方位量子数l, 磁気量子数 m_lには以下のような関係があるのでした。

\begin{eqnarray} \displaystyle n &= 1, 2, 3, ... \\ l &= 0, 1, ...., n-1 \\ m_l &= -l, -l + 1, ...., 0, 1, ....., l - 1, l \tag{3} \\ \end{eqnarray}

2p軌道つまり n = 2, l = 1, m_l = -1, 0, 1の時、正常ゼーマン効果によるエネルギー準位の分裂は、エネルギーシフト \mu_B B m_lであることから、図1の様になります。

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正常ゼーマン分裂だあ

そして更にスピンの効果も加え、そのスピンの大きさを s = +1/2, -1/2としておきましょう。すると、全角運動量Jは J = l + sと表せ、その値は J = 1 + 1/2 = 3/2 J = 1 - 1/2 = 1/2です。このそれぞれのJに対して、式1の量子数の法則*4に従って磁気量子数mが発生し、そのmはこれまた式5に従った軌道運動の磁気量子数 m_l = 1,  0, -1)とスピンの磁気量子数 m_s = 1/2 ,-1/2の和で表されているので、ある磁気量子数mに対する m_s m_lの組み合わせを定めることができます。例えば、 m = 1/2だったら、 (m_l, m_s) = (1, -1/2) (m_l, m_s) = (0, 1/2)の組み合わせあるよねみたいな感じです。この組み合わせに応じて m_l + 2m_sが決定し、エネルギー準位も決まります。その図が図2です。

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Paschen-Back効果だお。

この図を見てわかるように m_l + 2 m_s = 0のときは J = 3/2に属する準位と J = 1/2に属する準位が入り混じっています。これは何を意味するのでしょう。。 恐らくこれはJが保存していないことをさしており、強磁場を空間のある一軸に向けて印加したせいで空間等方性が失われて全角運動量が保存しなくなってしまっていることを表しているんだと思います。

ふぅ、とりあえず異常ゼーマン効果の簡単な図もかけたので一休みとしますか、、、 寿司食べたいです。あ、ちなみに僕のすきなネタはマグロです。 では。

*1:朝永振一郎著 「スピンはめぐる」より

*2:スピンの磁気モーメントと外部磁場との磁気的相互作用を表す項についている2は相対論的効果を取り入れたもので、一的的に学部の量子力学だとこの2が勝手に生えています。何年先になるかわかりませんがこの部分も詳しく説明したいです。

*3:この部分を少し詳しく書きたい。いつかの記事にて。

*4:角運動量の交換関係から導ける。