徒然なるままに

私の不器用な人生を見届けてください

Abnormal Zeeman Effect PART3

こんにちは。 メンボーです。

長い梅雨も明けて、いい天気がつづいていますね。 気温も急に上がりました。コロナで巣ごもりしていた人が多いと思います。熱中症には気を付けましょう。

依然申したように今回はSTEP2から始めます。とその前に、大まかな流れをもう一度以下に示しておきます。

STEP1. LS結合している系の磁場を印加していない、定常状態での固有関数1を求める。
STEP2. 磁場を印加したとき、固有関数がどのように変化するのかを考える。
STEP3. 磁場の印加時の固有関数2を定め、その固有関数2に対してハミルトニアンを作用させる。
その後基底を固有関数2にもつハミルトニアンを求め、そのハミルトニアン固有値を求める。

前回の記事では以下の固有関数を出して終わったのでした。

\begin{align*} &f_{-\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 β - \sqrt{\frac{2}{3}} u_{-1} α \hspace{18pt} f_{\frac{1}{2}} = - \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{2}{3}} u_1 β \\ &g_{-\frac{3}{2}} = u_{-1} β \hspace{85pt} g_{-\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 β + \sqrt{\frac{1}{3}} u_{-1} α \tag{1} \\ &g_{\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{1}{3}} u_1 β \hspace{27pt} g_{\frac{3}{2}} = u_1 α \hspace{7pt}\\ \end{align*}

これら6つの固有関数が磁場をかけていったときに、どのように変化をしていくのかを見ていくわけです。
この固有関数自体磁場Bがない時のものなので、式中にBがあってそいつを式中でいじるなんてことはできないみたいです。
さぁ、どう考えるか。
物理でも何でもそうだと思うのですが、ある原因が結果にどのような影響を与えているかをまず大雑把に知りたいときは、その原因となる部分の程度を極端に小さくまたは大きくしたときに結果がどう変化するかを見るのは有効な手段ですよね。
僕の大好きなコーヒーで例え話。どのコーヒー豆の挽き目(原因)が一番い美味しい(原因)のかを知りたいとします。この時、挽き目を極細挽きと粗挽きにしてコーヒーを淹れて飲み、極細挽きでは強い苦みを感じた。対して、粗挽きではあまり苦みを感じなかったとすれば、挽き目が粗ければ粗いほど苦みは減るということがおおよそ見当がつきます。 そうなんです。何が何だかわからなかったらとりあえず極端な場合をみてみるとなんとなくの目星がつくものです。

今回の極端な場合というのは、強磁場(B → \infty)をかけたときに固有関数がどう変化するのかを考えるということです。今考えているハミルトニアンは、

\begin{eqnarray} \displaystyle H &= H_0 + H_{LS} + H_B \\ H_{LS} &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) \\ H_B &= \mu_B ( \boldsymbol{l} + 2 \boldsymbol{s}) \cdot \boldsymbol{B} = \mu_B B (l_z + 2 s_z) \\ \end{eqnarray}

であり、摂動ハミルトニアン H'

\begin{eqnarray} \displaystyle H' &= H_{LS} + H_B \\ &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) + \mu_B B (l_z + 2 s_z) \end{eqnarray}

です。前々回の記事Abnormal Zeeman Effect PART1 - 徒然なるままにでも述べましたが、Bを大きくしていったときに系の状態をよく表してくれる固有関数は

\begin{eqnarray} \displaystyle u_{m_l}α \hspace{3pt} ,\ \hspace{3pt} u_{m_l}β \hspace{3pt} (m_l = \pm 1, 0) \tag{2} \end{eqnarray}

です*1 u_0 α, \hspace{3pt} u_1 βを基底に持つf{\frac{1}{2}} \hspace{3pt} , g{\frac{1}{2}}に着目してみましょう。 強磁場下では式1が良い固有関数になるということを踏まえると、以下のような固有関数の変化があるのではないかと推測ができます。

\begin{eqnarray} \displaystyle f_{\frac{1}{2}} &→ u_0 α \\ g_{\frac{1}{2}} &→ u_1 β \\ \end{eqnarray}

図にすると更に分かりやすくなるかもしれません。f{\frac{1}{2}}g{\frac{1}{2}}内積が0であること、そしてそれらの大きさが1であることから以下のような図が書けます。

f:id:cottonshrimp:20200809204328p:plain
くるくる

磁場をかけることで、この固有関数(というかこの場合はベクトルとして扱っていますが...)は u_0 α-u_1 β平面を時計周りに回転しているようにも見えなくないです。 これはf{-\frac{1}{2}}g{-\frac{1}{2}}に関しても同様で、以下のように変化すると考えられます。

\begin{eqnarray} \displaystyle f_{-\frac{1}{2}} &→ u_{-1} α \\ g_{-\frac{1}{2}} &→ u_0 β \\ \end{eqnarray}

残りの g{-\frac{3}{2}}, g{\frac{3}{2}}は元々式2を満たすのでそのまま変わらないとみていいでしょう。
ようやくSTEP2の目標「磁場を印加したとき、固有関数がどのように変化するのかを考える」を達成できました。まとめると以下のようになります。

\begin{eqnarray} \displaystyle   f_{\frac{1}{2}} &→ u_0 α \\ g_{\frac{1}{2}} &→ u_1 β \\ f_{-\frac{1}{2}} &→ u_{-1} α \\ g_{-\frac{1}{2}} &→ u_0 β \\ g_{-\frac{3}{2}} &→ u_{-1} β \\ g_{\frac{3}{2}} &→ u_{1} α \\ \end{eqnarray}

お疲れ様です。 次はSTEP3から始めます。

コロナでいつも通りの夏休みとはいかないと思いますが、皆さんに実りのある夏が訪れるよう願います。 では。


参考文献
小出昭一郎 (1969)『量子力学(I) 』, 裳華房

*1:前回の記事には| n, l, m_l, m_s>とブラケット形式で書いていましたが同じです。