徒然なるままに

私の不器用な人生を見届けてください

イチゴ収穫から始まる一日

おはようございます。
今日の僕の一日はイチゴ収穫から始まりました。

作業としてはごく単純で、下の画像の青い箱に右から小さいもの・大きいもの・
奇形のもので分けて並べていきます。
ただ、大きくて真っ赤に熟しているイチゴは果肉がとても柔らかいので、果肉を潰さぬように、慎重に収穫しなければいけないときはそれなりに気を遣います。

f:id:cottonshrimp:20210404114757p:plain

かわいい

実際に収穫をやっているとイチゴが何であんなに高いのかがよくわかります。
温度・湿度の管理も難しそうですし、果肉も非常にセンシティブで他の農作物よりも
取扱いに気を遣わなければいけないので。

いつかこういう細かい作業も機械にとってかわられる日が来るのかなと思いながら収穫していました。。。
10年後, 20年後はどうなっているんですかねぇ。。。

食事日記2021/04/02

おひさしぶりです。
前回の投稿は昨年の9月でしたか。。。
月日が経つのは早いものですね。。。

10月に自分の卒業研究テーマが明確に決定し、 そこから実験・解析・論文作成やらで
春休み開始までかなりバタバタしていました。
春休みも、卒業研究でやり残したことをつぶしていこうと思い、実験はずっと行っていたうえに、バイトをそこそこにし、今年で大学を去ってしまう同期と十分に遊んでいるうちにあっという間に終わってしまいました。。。
ピエンでございます。

久しぶりの投稿って結構腰が重いので、とりあえず食事日記をポンと投稿すると
他の記事も書いてくかぁという感じになるんすよね。
ってことで、昨日の飯です。

最近はバイト帰りが夕方なので、スーパーに寄って値引きされた商品を買うことが
とても楽しいです。このベビーリーフも、飲むヨーグルトもそれです。
で、メインは角煮丼、いや角煮ドン!なわけですが、この角煮は2か月前に作ったものを
冷凍にしてあったもので冷凍焼けしているかどうか心配でしたが、幸いしていません
で、大変おいしかったです。

自粛期間なので食事を楽しんでいきたいですね。
ではまた。

f:id:cottonshrimp:20210403183244p:plain

角煮うまし

 

Abnormal Zeeman Effect FINAL

こんにちは。秋ですね。 メンボーです。

前回の投稿から一か月以上経過してしまいました。。。 この一か月間、原子力研究開発機構での実習・院試・研究とやらで目まぐるしい毎日を過ごしていました。 またいろいろと吸収できたと思うので、また記事にできればいいなと思っています。

さて、今回は異常ゼーマン効果の最後の記事となります。異常ゼーマン効果のシリーズでやっていることを再々再度記します。 STEP1. LS結合している系の磁場を印加していない、定常状態での固有関数1を求める。 STEP2. 磁場を印加したとき、固有関数がどのように変化するのかを考える。 STEP3. 磁場の印加時の固有関数2を定め、その固有関数2に対してハミルトニアンを作用させる。

前回の記事ではSTEP2を遂行し、p軌道に電子が一つある系に対して磁場を印加したときに固有関数が

\begin{eqnarray} \displaystyle   f_{\frac{1}{2}} &→ u_0 α \\ g_{\frac{1}{2}} &→ u_1 β \\ f_{-\frac{1}{2}} &→ u_{-1} α \\ g_{-\frac{1}{2}} &→ u_0 β \\ g_{-\frac{3}{2}} &→ u_{-1} β \\ g_{\frac{3}{2}} &→ u_{1} α \\ \tag{1} \end{eqnarray}

このように変化するだろうと考えました。今回遂行するのはSTEP3で、これらにハミルトニアンを作用させることです。 早速やっていきます。 摂動ハミルトニアンの部分を取り出すと

\begin{eqnarray} \displaystyle H' &= H_{LS} + H_B \\ &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) + \mu_B B (l_z + 2 s_z) \end{eqnarray}

で、前々回記事Abnormal Zeeman Effect PART2 - 徒然なるままにの式(2)でも書いたように \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}は以下のように表せます。

\begin{eqnarray} \displaystyle \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s} = \frac{1}{2}(l_+ s_- + l_- s_+) + l_z s_z \end{eqnarray}

以下の性質を利用してまずはハミルトニアンの一項目であるLS項を固有関数(1)達に対して作用させてみましょう。

\begin{eqnarray} \displaystyle l_z Y^m _l &= m \hbar Y^m _l \\ l_+ Y^m _l &= \hbar \sqrt{ (l - m)(l + m + 1) } Y^{m+1} _l \\ l_- Y^m _l &= \hbar \sqrt{ (l + m ) (l - m + 1) } Y^{mー1} _l \end{eqnarray}


と言いましたが、実はこの計算はすでに前々回記事でやっていて以下のようになります。(LS結合における比例係数\kappaは省略した。)

\begin{eqnarray} \displaystyle (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{-1}α &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 β - \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} α \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{0}α &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_1 β \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{1}α &= \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_1 α \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{-1}β &= \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} β \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{0}β &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_{-1} α \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{1}β &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 α - \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{1} β \tag{1} \end{eqnarray}


次にハミルトニアンの二項目である、外部磁場との相互作用項を計算すると以下のようになります。(係数としてつく\mu_B Bは省略した。)

\begin{eqnarray} \displaystyle (l_z + 2 s_z) u_{-1} α &= \hbar (-1 + 2 × 1/2) = 0\\ (l_z + 2 s_z) u_{0} α &= \hbar u_{0} α\\ (l_z + 2 s_z) u_{1} α &= \hbar 2 u_{1} α\\ (l_z + 2 s_z) u_{-1} β &= \hbar (-2) u_{-1} β \\ (l_z + 2 s_z) u_{0} β &= \hbar (-1) u_{0} β \\ (l_z + 2 s_z) u_{+1} β &= 0 \tag{2} \end{eqnarray}


式(1), (2)より

\begin{eqnarray} \displaystyle H' u_{-1} α &= \kappa \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 β - \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} α 〇\\ H' u_{0} α &= \kappa \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_1 β + \mu_B B \hbar u_{0} α ●\\ H' u_{1} α &= \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_1 α + 2 \mu_B B \hbar u_1 α△\\ H' u_{-1} β &= \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} β -2 \mu_B B \hbar u_{-1} β□ \\ H' u_{0} β &= \kappa \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_{-1} α - \mu_B B \hbar u_{0} β 〇\\ H' u_{1} β &= \kappa \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 α - \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{1} β ● \tag{3} \end{eqnarray}


となります。そしてこの式(3)から、〇は u_{-1} α , \, u_0 β の基底を持つ部分空間を、●は u_0 α , u_1 βの基底を持つ部分空間を、△は u_1 α の基底を持つ部分空間を、□はu_{-1} βの基底を持つ部分空間を成すということが分かります。 なので、〇●△□はそれぞれ独立に扱ってよいということになります。 △□はすでに固有値がそれぞれE_{1, α} = \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 + 2 \mu_B B \hbarE_{-1, β} = \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 -2 \mu_B B \hbarとなっているので手を施す必要はありません。(※以下エネルギー固有値E_{l, α or β})とする。) 〇●に関しては2Dの行列の固有値を求めなければいけないことが分かります。簡単のため P = \kappa \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2, Q = \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2, R = \mu_0 B \hbarとしておくと○に関しては

\begin{array}{cc} R & P\\ P & -Q\\ \end{array}

●に関しては

\begin{array}{cc} -Q & P\\ P & -R\\ \end{array}

に対する固有値方程式を解けばよい。早速○に関して解くと、

\begin{eqnarray} \displaystyle \epsilon^2 + (Q - R)\epsilon - RQ - P^2 = 0 \\ ⇒ \epsilon &= \frac{1}{2} ( -Q + R + \sqrt{ (Q+R)^2 + 4p^2 } ) \\ &= \frac{1}{2} \left( -Q + R + (Q + R) \sqrt{ 1 + \frac{4P^2}{(Q+R)^2}} \right) \end{eqnarray}


であり、●に関しても解くと、

\begin{eqnarray} \displaystyle \epsilon &= \frac{1}{2} ( -R - Q + \sqrt{ (R-Q)^2 + 4p^2 } ) \\ &= \frac{1}{2} \left( -R - Q + (R - Q) \sqrt{ 1 + \frac{4P^2}{(R-Q)^2}} \right) \end{eqnarray}


となります。強磁場下(パーシェンバック効果)、つまり B → \infty ,  R → \inftyを考えると、

\begin{eqnarray} \displaystyle (1+x)^{\frac{1}{2}} \approx 1 + \frac{1}{2} x + O(x^2) \end{eqnarray}


なので、E_{ (-1,α) , (0, β) } = R( = \mu_B B \hbar), -Q  (= - \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 ) E_{ (0, α) , (1, β) } = -Q (= -k \frac{1}{2} {\hbar}^2 ), -R (= - \mu_B B \hbar)となります。(※ここで用いた下付き添え字は先ほどと同様にl, α or βを示す。) ここまでで求めたエネルギー固有値E_{1 \, α} , E_{-1 \, β} , E_{ (-1 \, α) \, (0 \, β) } , E_{ (0 \, α) \, (1 \, β) }を以下にまとめます。

\begin{eqnarray} \displaystyle E_{1, α} &= \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 + 2 \mu_B B \hbar \\ E_{-1, β} &= \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 - 2 \mu_B B \hbar \\ E_{ (-1,α) , (0, β) } &= \mu_B B \hbar, - \kappa \frac{1}{2} {\hbar}^2 \\ E_{ (0, α) , (1, β) } &= - \mu_B B \hbar, -k \frac{1}{2} {\hbar}^2 \end{eqnarray}


これらを図に示すとこんな感じ↓でしょうか。

f:id:cottonshrimp:20200929204533p:plain
Paschen-Back効果だい。

異常ゼーマン効果の最初の記事→Abnormal Zeeman Effect PART1 - 徒然なるままにで書いたよりも詳細なグラフがかけました。最終的にエネルギーの具体的な表式が求められたことで、PART1の記事では等間隔に描かれていたエネルギー準位図も等間隔ではないことが分かります。こんな風に異常?な分裂をするから現象の名前にもも'異常'とついたのでしょうか。 軽く総括をします。 異常ゼーマン効果に関する記事はPART1,2,3,FINALまで計4回にわたって、そして正常ゼーマン効果まで含めれば7回にわたってかいてきましたが、結果を見れば至極当然でわざわざながったらしいことをしていると感じる人ばかりかと思います。 でも、勉強になることも多かったと思います。磁場がかかっている系のハミルトニアンの導出、物理的に見通しをよくする式変形、またそれを作用させる波動関数の基底の取り方、正常・異常ゼーマン効果両者のエネルギー分裂の様子の違い等... 自分は頭が非常に悪いと自覚しているのででうまく書けていないのではないかと心配ですが、読んでくれた人には教育的な内容であったらいいなと思っています。 これからも物理の記事は書いていくとは思いますが変なところがあれば躊躇なく指摘してほしいです。 では。

 

  

Abnormal Zeeman Effect PART3

こんにちは。 メンボーです。

長い梅雨も明けて、いい天気がつづいていますね。 気温も急に上がりました。コロナで巣ごもりしていた人が多いと思います。熱中症には気を付けましょう。

依然申したように今回はSTEP2から始めます。とその前に、大まかな流れをもう一度以下に示しておきます。

STEP1. LS結合している系の磁場を印加していない、定常状態での固有関数1を求める。
STEP2. 磁場を印加したとき、固有関数がどのように変化するのかを考える。
STEP3. 磁場の印加時の固有関数2を定め、その固有関数2に対してハミルトニアンを作用させる。
その後基底を固有関数2にもつハミルトニアンを求め、そのハミルトニアン固有値を求める。

前回の記事では以下の固有関数を出して終わったのでした。

\begin{align*} &f_{-\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 β - \sqrt{\frac{2}{3}} u_{-1} α \hspace{18pt} f_{\frac{1}{2}} = - \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{2}{3}} u_1 β \\ &g_{-\frac{3}{2}} = u_{-1} β \hspace{85pt} g_{-\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 β + \sqrt{\frac{1}{3}} u_{-1} α \tag{1} \\ &g_{\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{1}{3}} u_1 β \hspace{27pt} g_{\frac{3}{2}} = u_1 α \hspace{7pt}\\ \end{align*}

これら6つの固有関数が磁場をかけていったときに、どのように変化をしていくのかを見ていくわけです。
この固有関数自体磁場Bがない時のものなので、式中にBがあってそいつを式中でいじるなんてことはできないみたいです。
さぁ、どう考えるか。
物理でも何でもそうだと思うのですが、ある原因が結果にどのような影響を与えているかをまず大雑把に知りたいときは、その原因となる部分の程度を極端に小さくまたは大きくしたときに結果がどう変化するかを見るのは有効な手段ですよね。
僕の大好きなコーヒーで例え話。どのコーヒー豆の挽き目(原因)が一番い美味しい(原因)のかを知りたいとします。この時、挽き目を極細挽きと粗挽きにしてコーヒーを淹れて飲み、極細挽きでは強い苦みを感じた。対して、粗挽きではあまり苦みを感じなかったとすれば、挽き目が粗ければ粗いほど苦みは減るということがおおよそ見当がつきます。 そうなんです。何が何だかわからなかったらとりあえず極端な場合をみてみるとなんとなくの目星がつくものです。

今回の極端な場合というのは、強磁場(B → \infty)をかけたときに固有関数がどう変化するのかを考えるということです。今考えているハミルトニアンは、

\begin{eqnarray} \displaystyle H &= H_0 + H_{LS} + H_B \\ H_{LS} &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) \\ H_B &= \mu_B ( \boldsymbol{l} + 2 \boldsymbol{s}) \cdot \boldsymbol{B} = \mu_B B (l_z + 2 s_z) \\ \end{eqnarray}

であり、摂動ハミルトニアン H'

\begin{eqnarray} \displaystyle H' &= H_{LS} + H_B \\ &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) + \mu_B B (l_z + 2 s_z) \end{eqnarray}

です。前々回の記事Abnormal Zeeman Effect PART1 - 徒然なるままにでも述べましたが、Bを大きくしていったときに系の状態をよく表してくれる固有関数は

\begin{eqnarray} \displaystyle u_{m_l}α \hspace{3pt} ,\ \hspace{3pt} u_{m_l}β \hspace{3pt} (m_l = \pm 1, 0) \tag{2} \end{eqnarray}

です*1 u_0 α, \hspace{3pt} u_1 βを基底に持つf{\frac{1}{2}} \hspace{3pt} , g{\frac{1}{2}}に着目してみましょう。 強磁場下では式1が良い固有関数になるということを踏まえると、以下のような固有関数の変化があるのではないかと推測ができます。

\begin{eqnarray} \displaystyle f_{\frac{1}{2}} &→ u_0 α \\ g_{\frac{1}{2}} &→ u_1 β \\ \end{eqnarray}

図にすると更に分かりやすくなるかもしれません。f{\frac{1}{2}}g{\frac{1}{2}}内積が0であること、そしてそれらの大きさが1であることから以下のような図が書けます。

f:id:cottonshrimp:20200809204328p:plain
くるくる

磁場をかけることで、この固有関数(というかこの場合はベクトルとして扱っていますが...)は u_0 α-u_1 β平面を時計周りに回転しているようにも見えなくないです。 これはf{-\frac{1}{2}}g{-\frac{1}{2}}に関しても同様で、以下のように変化すると考えられます。

\begin{eqnarray} \displaystyle f_{-\frac{1}{2}} &→ u_{-1} α \\ g_{-\frac{1}{2}} &→ u_0 β \\ \end{eqnarray}

残りの g{-\frac{3}{2}}, g{\frac{3}{2}}は元々式2を満たすのでそのまま変わらないとみていいでしょう。
ようやくSTEP2の目標「磁場を印加したとき、固有関数がどのように変化するのかを考える」を達成できました。まとめると以下のようになります。

\begin{eqnarray} \displaystyle   f_{\frac{1}{2}} &→ u_0 α \\ g_{\frac{1}{2}} &→ u_1 β \\ f_{-\frac{1}{2}} &→ u_{-1} α \\ g_{-\frac{1}{2}} &→ u_0 β \\ g_{-\frac{3}{2}} &→ u_{-1} β \\ g_{\frac{3}{2}} &→ u_{1} α \\ \end{eqnarray}

お疲れ様です。 次はSTEP3から始めます。

コロナでいつも通りの夏休みとはいかないと思いますが、皆さんに実りのある夏が訪れるよう願います。 では。


参考文献
小出昭一郎 (1969)『量子力学(I) 』, 裳華房

*1:前回の記事には| n, l, m_l, m_s>とブラケット形式で書いていましたが同じです。

Abnormal Zeeman Effect PART2

こんにちは。 お久しぶりです、メンボーです。

もう8月になってしまいますね。 本当は今頃東京オリンピックが開かれていたのかと思うと少し悲しい気持ちになります。 コロナの猛威が早く収まることを願っています。

さて今回はですね、題目通り以前書いた異常ゼーマン効果の記事Abnormal Zeeman Effect PART1 - 徒然なるままにの 続きです。

前回の記事より、原子核の周りを軌道角運動量 \boldsymbol{l}で周回している電子(スピン \boldsymbol{s}を持つ)に磁場Bをz軸方向に印加したとき、系のハミルトニアンは以下で与えられるのでした。

\begin{eqnarray} \displaystyle H &= H_0 + H_{LS} + H_B \\ H_{LS} &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) \\ H_B &= \mu_B ( \boldsymbol{l} + 2 \boldsymbol{s}) \cdot \boldsymbol{B} = \mu_B B (l_z + 2 s_z) \\ \end{eqnarray}

前回は H_B >> H_{LS}としたので、このLS結合の部分を気にすることはありませんでした。
しかし今回は、先の軌道角運動量・スピンと磁場との相互作用がLS結合よりも十分に大きいとする制約を付けずに議論を進めていきたいと思います。
狙いは行列力学としての量子力学を垣間見てみること
です。

今回のPARTを含めて恐らく2,3回ほど記事を書いていくと思いますが、大まかな流れは以下のようになります。
STEP1. LS結合している系の磁場を印加していない、定常状態での固有関数1を求める。
STEP2. 磁場を印加したとき、固有関数がどのように変化するのかを考える。
STEP3. 磁場の印加時の固有関数2を定め、その固有関数2に対してハミルトニアンを作用させる。
その後基底を固有関数2にもつハミルトニアンを求め、そのハミルトニアン固有値を求める。

早速STEP1をやっていきましょう。 一つの電子がp軌道(n=2, l = 0,1 , m = -1, 0, 1)に入っている場合を考えます。一番簡単な例ですので。
このp軌道の固有状態は(動径成分の波動関数)×(角度成分の波動関数)という形になるのでした。

\begin{eqnarray} \displaystyle R_{n,l} Y_{l,m} = R_{2,1}Y_{1, -1} ,\ R_{2,1}Y_{1,0} ,\ R_{2,1}Y_{1, 1} \end{eqnarray}

これらをそれぞれ簡単のためu_{-1},  u_0,  u_1としておく。
それにスピンの上向き・下向きをそれぞれα,βが表すとしておく。
すると以下の六つの固有関数を基底として考えられる。

\begin{eqnarray} \displaystyle u_{-1}α ,\ u_{0}α ,\ u_{1}α ,\ u_{-1}β ,\ u_{0}β ,\ u_{1}β \tag{1} \end{eqnarray}

基底を用意できたので、LS項の \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}を実際に固有関数に作用させて行列表示にしましょう。 その前に、 \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s} = l_x s_x + l_y s_y + l_z s_zは昇降演算子で表しておきます。  l_z s_zは先ほど記した六つの基底を固有関数に持つため、そのままに放置。いじる部分はx,y成分です。

\begin{eqnarray} \displaystyle l_x = \frac{1}{2}(l_+ + l_-) ,\ l_y = \frac{1}{2i}(l_+ - l_-) \\ s_x = \frac{1}{2}(s_+ + s_-) ,\ s_y = \frac{1}{2i}(s_+ - s_-) \\ \end{eqnarray}


を用いて \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}を書き換えると以下のようになります。

\begin{eqnarray} \displaystyle \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s} = \frac{1}{2}(l_+ s_- + l_- s_+) + l_z s_z \tag{1} \end{eqnarray}


この関数を先程の固有関数たちに作用させます。この時、以下の性質を思い出しながら計算します。

\begin{eqnarray} \displaystyle l_z Y^m _l &= m \hbar Y^m _l \\ l_+ Y^m _l &= \hbar \sqrt{ (l - m)(l + m + 1) } Y^{m+1} _l \\ l_- Y^m _l &= \hbar \sqrt{ (l + m ) (l - m + 1) } Y^{mー1} _l \end{eqnarray}


面倒だけど。。。やるのです。。。

\begin{eqnarray} \displaystyle (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{-1}α &= \frac{1}{2} ( l_+ u_{-1} ) (s_- α) + \frac{1}{2} ( l_- u_- ) ( s_+ α ) + ( l_z u_{-1} ) ( s_z α ) \\ &= \frac{1}{2} \Bigl( \hbar \sqrt{ ( 1- (-1) ) ( 1 - 1 + 1) } u_0 \Bigr) \Bigl( \hbar \sqrt{ ( \frac{1}{2} + \frac{1}{2} ) ( \frac{1}{2} - \frac{1}{2} + \frac{1}{2} ) } \Bigr) + 0 + \Bigl( \hbar (-1) u_{-1} \Bigr) \Bigl (\hbar (+ \frac{1}{2}) \Bigr) α \\ &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 β - \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} α \end{eqnarray}


以上のようにしてやっていきます。

\begin{eqnarray} \displaystyle (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{-1}α &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 β - \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} α \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{0}α &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_1 β \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{1}α &= \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_1 α \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{-1}β &= \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{-1} β \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{0}β &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_{-1} α \\ (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) u_{1}β &= \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 u_0 α - \frac{1}{2} {\hbar}^2 u_{1} β \\ \end{eqnarray}


ふぅ~~。。
以上の計算を基に \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}の行列表示を書きます。
六つの基底で構成される系なので6×6行列になります。式(1)で並べた順番どおり一行目を u_{ー1} α, 二行目を u_0 α……としましょうか。列に関しても同様とします。
すると、以下のような行列になります。

\begin{array}{cccccc} -\frac{1}{2} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2& 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 \\ 0 & 0 & \frac{1}{2} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \frac{1}{2} {\hbar}^2 & 0 & 0 \\ \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 & - \frac{1}{2} {\hbar}^2 \\ \end{array}

 \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}の行列表示を求められたので、めでたしめでたし。。。と言いたいところですが、この行列表示はいわば”汚い基底”の取り方をしているのであまりよくありません。 そもそも今考えている系は量子化軸としてz軸をとっており、LS結合で考えられる状態は l_z + s_z固有値である \hbar(m_l + m_s)の値は違えど、それが保存される系で構成されるものであると予想されます。だから、"上手い基底"の取り方をすれば、行列表示したときにブロックが現れると予想もできます。
「"上手い基底"の取り方」と大層に言っているわけですが、今回はただただ固有値 \hbar(m_l + m_s)の値の大きさ順に固有関数を並べて基底にするだけです。
 \hbar(m_l + m_s)の大きさで分類して下に記しておきます。

\begin{eqnarray} \displaystyle m_l + m_s = \frac{3}{2} ⇒ u_1 α \\ m_l + m_s = \frac{1}{2} ⇒ u_0 α, u_1 β \\ m_l + m_s = -\frac{1}{2} ⇒ u_{ー1} α, u_0 β \\ m_l + m_s = -\frac{3}{2} ⇒ u_{ー1} β \end{eqnarray}

以上のことから、第一行を u_1 α ,第二行を u_0 α, 第三行を u_1 β ……とします。列に関しても同じです。こうして再度行列表示してあげると以下のようになります。

\begin{array}{cccccc} \frac{1}{2} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 & -\frac{1}{2} {\hbar}^2 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & -\frac{1}{2} {\hbar}^2 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \frac{1}{\sqrt{2}} {\hbar}^2 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & \frac{1}{2} {\hbar}^2 \\ \end{array}

いいかんじすね。これでブロックの部分の2×2行列の固有関数を求めてあげればいいわけです。ここで注意すべきは、出来上がる固有関数の大きさが1になっていなければいけないということです。 ただの計算をここに起こすのが面倒だったので、pdf埋め込みしておきます。(雑記of雑記な為参考にならない可能性大)ここでは、m_l + m_s = \frac{1}{2}の行列しか計算していませんが、 m_l + m_s = - \frac{1}{2}の行列でも数値としては同じものがでるので安心してください。

m_l + m_s = \frac{1}{2}の行列に関する固有値・固有関数は以下のようになります。

\begin{eqnarray} \displaystyle  - {\hbar}^2 → - \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{2}{3}} u_1 β \hspace{10pt} ,\ \hspace{10pt} \frac{1}{2} {\hbar}^2 → \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{1}{3}} u_1 β  \end{eqnarray}

一方、m_l + m_s = -\frac{1}{2}の行列に関する固有値・固有関数は以下のようになります。

\begin{eqnarray} \displaystyle  - {\hbar}^2 → \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 β - \sqrt{\frac{2}{3}} u_{-1} α \hspace{10pt} ,\ \hspace{10pt} \frac{1}{2} {\hbar}^2 → \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 β + \sqrt{\frac{1}{3}} u_1 α  \end{eqnarray}

固有値 -{\hbar}^2の固有関数を f固有値 \frac{1}{2} {\hbar}^2の固有関数を gとし更に m_l + m_sの値をその関数の下付き添え字にしてラベリングを行えばここまでで求められた固有関数は以下のようになる。

\begin{align*} &f_{-\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 β - \sqrt{\frac{2}{3}} u_{-1} α \hspace{18pt} f_{\frac{1}{2}} = - \sqrt{\frac{1}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{2}{3}} u_1 β \\ &g_{-\frac{3}{2}} = u_{-1} β \hspace{85pt} g_{-\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 β + \sqrt{\frac{1}{3}} u_{-1} α \\ &g_{\frac{1}{2}} = \sqrt{\frac{2}{3}} u_0 α + \sqrt{\frac{1}{3}} u_1 β \hspace{27pt} g_{\frac{3}{2}} = u_1 α \hspace{7pt}\\ \end{align*}

漸くSTEP1がおわりました。STEP1はなんだったかというと「LS結合している系の磁場を印加していない、定常状態での固有関数1を求める。」でしたので。
中心力場内のp軌道に存在する1つの電子のスピンと軌道角運動量によるLS結合により、もともと l = -1, 0, 1 s = -\frac{1}{2}, +\frac{1}{2} 3×2=6状態で縮退していた準位が上の様に2重と4重に分かれることもわかりましたね。

次回はステップ2から始めます。 お疲れさまでした。 また。


参考文献
小出昭一郎 (1969)『量子力学(I) 』, 裳華房

千と千尋の神隠しを観て……

こんにちは。
お久しぶりです。


投稿が一か月ほど空いてしまいましたね。
この一か月何をしていたかというと、研究を行っていました。(ようやく研究室に行けるようになったので)
といっても大したことはまだできておらず、日々どれだけ研究が大変なのかを実感しております。

ま、近況報告はここまでにしてですね、今回の本題に入りますわね。

一昨日からジブリ作品が映画館で放映されるというビッグイベントが行われていて、早速自分も観に行ってきました。
複数のジブリ作品が放映されていましたが、僕は「千と千尋の神隠し」を観ました。
僕が最後に観たのは、おそらく小学生低学年。
当時は、ただただストーリーを楽しんでいただけなので、ファンタジー作品の一つととらえていたような気がします。
と同時にテーマや伝えたいことを自分の中で見つけることができないつかみどころのない作品という印象もありました。
ですがこの前観てきて、僕なりに「千と千尋」の良さが分かったし、それを共有したいと思ったのでここで文にして残しておきたいと思います。

ここで少しあらすじを追うと、
主人公の千尋が神の世界に迷い込んでしまい、そこでハク(これは神の世界での名前で、物語の終盤まで思い出すことができないんでしたね。)に助けられます。
そこから冒頭で豚にされてしまった両親を元に戻し、ともに自分の世界に帰るべく神の世界で奮闘するのですが、その中で千(千尋が神の世界の中で与えられた名前)とハクはお互いに支えあい、そしてついに物語の終盤でハクは自分の名前、そして昔千尋との間にあったことを思い出します。
自分は琥珀川と呼ばれる川の化身でニギハヤミコハクヌシという名前だったこと、千尋がその川でおぼれかけていたところを救ったということ。
二人が手を繋いで宙を舞うシーンはとてもいいですよね。
そして千尋は湯婆婆(神の世界の支配人みたいな感じでしたよね)からの試練(数匹の豚の中から自分の両親を言い当てる)を乗り越えて、無事両親と3人で本当の世界に戻ることができたのでした。
だいぶ端折りましたがこのような感じですよね。

そしてこの作品をみて強く感じたのは
「忘れてしまっても消えてなくなってしまうことはないから大丈夫だよ」
というメッセージです。

ハクが記憶を取り戻すシーン、そして銭婆婆(湯婆婆の姉でしたね)の言った
「一度あったことは忘れないものさ、思い出せないだけで」
という言葉、そしてあらすじでは紹介しなかった最後の最後のシーンを考えると先のメッセージが読み取れるんですよ。

最後の最後のシーンは千尋が神の世界から人間の世界に戻るところです。
そこで千尋は両親と再会するのですが、両親は記憶をなくしているのです。
ここで千尋はどうなのか。
作品中では、神の世界と人間の世界をつなぐトンネルをくぐった後、千尋はトンネルにどちらともとれるような表情を向けて、その場を去ってエンディングになります。
千尋の中に神の世界の記憶が残っているのか否かわからないまま終わっています。

ここで僕は、千尋は神の世界でのことを忘れてほしい、そう願うわけですね。
なぜなら、自分はこの作品から
「忘れてしまっても消えてなくなってしまうことはないから大丈夫だよ」
という言葉を受け取ったから。
千尋はこの後生きていく中で、ハクのことも神の世界で起こったことも思い出すことはないかもしれない。
けれども、何かのきっかけで全てを思い出すようなもの(ここで"思い出"と呼んでおきますか)、を作ったことは確かです。
神の世界で湯婆婆から名と記憶を奪われてもそれを取り戻したハク同様、千尋はハクとの"思い出"を思い出せる可能性を秘めて生きていく、そう考えるとなんだか最後千尋がトンネルを振り返るときの表情が明るくなって見えるようなそんな気がします。

僕らにも思い出せないけど、忘れてしまっていることって沢山ありますよね。
そしてその忘却は記憶を消す悲しいもの、そんな風に捉えられがちです。
でも、そんなことはない。
忘却は、”思い出”を作り、それを温められる可能性を僕らに与えてくれるものだと伝えているようなそんな気がしました。

千と千尋の神隠し」は以上に語ったようなこと以外のテーマも含んでいるとても奥深い作品だと思います。
そんな作品が映画館で観れるというまたとないチャンス、逃してはいけません。
そして、観た者同士でこの作品について語り合うのです。
”思い出”を作るために。

 

 

Abnormal Zeeman Effect PART1

こんにちは。
自粛規制の中、週1回日入ってくる農業が楽しくてしょうがないです。
メンボーです。


前回の記事で正常ゼーマン効果が終わりましたので、引き続き異常ゼーマン効果について話していきたいと思います。

まぁ、プライベートな話にはなりますが、自分の研究室が磁性をテーマにしているためスピンの発見のきっかけとなったこの異常ゼーマン効果という現象は語らずにはいられなかったという背景もあるのです。。自分はどんどん先の理論をやっていきたいタイプの人間なので、量子力学をもう一度復習するという行為自体少し酷でしたし、復習することで見える自分の理解度の低さに呆然としていました。。 なので、今日は文調に元気がないかもしれません。まぁ、しょうがないです。 人生は単振動。


やっていきます。 とりあえず、異常ゼーマン効果を一言でまとめ、オキモチだけチョットワカル感を持っておきましょう。

「縮退していたスピン角運動量のエネルギーが外部磁場によって解かれること」

かなぁ。(信用ならんな。)正常ゼーマン効果との大きな違いは"スピン"の効果が取り入れられているという点です。

余談ですが。。。。 スピンが量子力学に導入される以前、このゼーマン効果の問題、詳しく言えば、スペクトル多重項内準位の間隔を求めるという問題は、原子核角運動量と電子軌道角運動量によって生じる磁気的相互作用により説明されると考えられていたようです。この考えのもと、スペクトル多重項内準位の間隔を米国の物理学者アルフレット・ランデ氏(あのランデのg因子のランデ氏です) が理論的に求めたのですが、残念ながら実験値と合いませんでした。ここで、電子自体が回っているのではないかというアイデアが導入されることになったようです。*1

さて、話をもとに戻してっと。オキモチだけ理解したところで、早速具体的な話に入っていくのですが予め大まかな道しるべをここで↓宣言しておきますね。

「異常ゼーマン効果理解した。」までの道のり

1.スピンのことも考えて磁場が印加されている原子のハミルトニアンHを書き下す。
2.このHを電子の固有関数に作用させて、エネルギー準位が分裂しているか確かめる。
です。

正常ゼーマン効果の時とは違い、ラグランジアンを作ってそこからルジャンドル変換して...なんてこともうしないので今日のこの記事で終わります。 以前の記事→Normal Zeeman Effect PART2 - 徒然なるままにでスピンを考慮しない状況下のハミルトニアン(ここでは一般的な荷電粒子として電荷qを持たせていますが、ここからは電子として電荷は-eとしましょう)は

\begin{eqnarray} \displaystyle H = \frac{\boldsymbol{P}^ 2}{2m} - e \phi + \biggl(-\frac{e}{2m} (\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{P}) + \frac{q^ 2}{8m} \Bigl(\boldsymbol{B} r^ 2 - (\boldsymbol{B} \cdot \boldsymbol{r}) \boldsymbol{r} \Bigl) \biggl) \cdot \boldsymbol{B} \tag{1} \end{eqnarray}

で、最後の反磁性効果を示す項は無視できるほど小さいとすることができたのでした。よって結局、

\begin{eqnarray} \displaystyle H = \frac{\boldsymbol{P}^ 2}{2m} - e \phi + \mu_B \boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{B} \end{eqnarray}

となるわけです。ここにスピンの効果が加わるとどんなタームが現れるでしょうか。これらですよね↓
1スピンと磁場との磁気的相互作用項
2.スピンと原子の軌道角運動量との相互作用項
二つ目の物はLS結合と呼ばれます。ここでハミルトニアン整理のため、未摂動項をH_0、摂動項としてのLS結合の項を H_{LS}、これまた摂動項としての磁場との相互作用項を H_Bとします。すると

\begin{eqnarray} \displaystyle H &= H_0 + H_{LS} + H_B \tag{2}\\ H_{LS} &= \kappa (\boldsymbol{l} \cdot \boldsymbol{s}) \tag{3}\\ H_B &= \mu_B ( \boldsymbol{l} + 2 \boldsymbol{s}) \cdot \boldsymbol{B} = \mu_B B (l_z + 2 s_z) \tag{4}\\ \end{eqnarray}

こんなハミルトニアンになるわけですよね。*2
(ここで、磁場はz軸方向に印加していることに注意)そして今Bをどんどん大きくして、摂動項の中で[tex : H_B >> H_{LS}]が成立するような状況だとします。この時系の状態を表すのによい固有ケットは | n, l, m_l, m_s>ですよね。*3(ただし、磁気量子数を軌道角運動量の磁気量子数 m_lとスピンの磁気量子数の m_sとした。)なぜなら演算子 l_z, s_zを作用させれば行列対角上に固有値を返してくれるのですから。物理的に考えれば、磁場がz軸方向にかかったことでその系の状態をよりよく表してくれる基底が変化したともいえますでしょうか。この固有ケットで H_Bを挟めば磁場によるエネルギー準位の変化が

\begin{eqnarray} \displaystyle < n, l, m_l, m_s | H_B | n, l, m_l, m_s > = \mu_B B (m_l + 2m_s) \end{eqnarray}

となります。前回記事で求めた正常ゼーマン効果のエネルギー準位シフトの式は \mu_B B m_lでした。 それでは各量子数に具体的に数値を代入して準位分裂の様子をみていきましょう。主量子数n, 方位量子数l, 磁気量子数 m_lには以下のような関係があるのでした。

\begin{eqnarray} \displaystyle n &= 1, 2, 3, ... \\ l &= 0, 1, ...., n-1 \\ m_l &= -l, -l + 1, ...., 0, 1, ....., l - 1, l \tag{3} \\ \end{eqnarray}

2p軌道つまり n = 2, l = 1, m_l = -1, 0, 1の時、正常ゼーマン効果によるエネルギー準位の分裂は、エネルギーシフト \mu_B B m_lであることから、図1の様になります。

f:id:cottonshrimp:20200728214018p:plain
正常ゼーマン分裂だあ

そして更にスピンの効果も加え、そのスピンの大きさを s = +1/2, -1/2としておきましょう。すると、全角運動量Jは J = l + sと表せ、その値は J = 1 + 1/2 = 3/2 J = 1 - 1/2 = 1/2です。このそれぞれのJに対して、式1の量子数の法則*4に従って磁気量子数mが発生し、そのmはこれまた式5に従った軌道運動の磁気量子数 m_l = 1,  0, -1)とスピンの磁気量子数 m_s = 1/2 ,-1/2の和で表されているので、ある磁気量子数mに対する m_s m_lの組み合わせを定めることができます。例えば、 m = 1/2だったら、 (m_l, m_s) = (1, -1/2) (m_l, m_s) = (0, 1/2)の組み合わせあるよねみたいな感じです。この組み合わせに応じて m_l + 2m_sが決定し、エネルギー準位も決まります。その図が図2です。

f:id:cottonshrimp:20200728214436p:plain
Paschen-Back効果だお。

この図を見てわかるように m_l + 2 m_s = 0のときは J = 3/2に属する準位と J = 1/2に属する準位が入り混じっています。これは何を意味するのでしょう。。 恐らくこれはJが保存していないことをさしており、強磁場を空間のある一軸に向けて印加したせいで空間等方性が失われて全角運動量が保存しなくなってしまっていることを表しているんだと思います。

ふぅ、とりあえず異常ゼーマン効果の簡単な図もかけたので一休みとしますか、、、 寿司食べたいです。あ、ちなみに僕のすきなネタはマグロです。 では。

*1:朝永振一郎著 「スピンはめぐる」より

*2:スピンの磁気モーメントと外部磁場との磁気的相互作用を表す項についている2は相対論的効果を取り入れたもので、一的的に学部の量子力学だとこの2が勝手に生えています。何年先になるかわかりませんがこの部分も詳しく説明したいです。

*3:この部分を少し詳しく書きたい。いつかの記事にて。

*4:角運動量の交換関係から導ける。